『カビンくんとドンマちゃん』
著:加藤路瑛
発行:ワニブックス
感覚過敏研究所の所長で現役高校生の加藤路瑛さんが書かれた感覚過敏当事者発信の本です。
カビンくんとドンマちゃんを通して感覚の困りごとが追体験していくストーリーになっています。
感覚過敏については最近はメディアでも取り上げられているので、少しずつ周知されてきているかもしれません。
それでもまだまだわがままとか我慢強くないといった誤解がつきまとい、当事者が肩身の狭い思いをしている状況はあまり変わっていない気がします。
感覚の問題の生きづらさは過敏だけではなく、鈍麻にもあるというのはあまり知られていません。
鈍麻がある人は、自分の体なのに生きるのに必要な感覚に気が付きにくいので、命の危険にさらされることもあります。
また日常生活の動作や作業が思うようにできないことが多く、自己肯定感の低下に繋がることもしばしばです。
感覚の問題は、その「程度」がなかなか人に分かってもらえないので、過敏も鈍麻も『普通』の生活からドロップアウトしかねないほどの苦しさを抱えてしまいます。
最近は、感覚過敏やHSP、発達障害や不登校も当事者の方が書かれた本やメディア発信がかなり増えてきたように思います。
専門家の方が書かれたものとは一味違うのは、エピソードが具体的でリアルに伝わってきたり、本人が見てきた世界から出てきた言葉の説得力のようなものが感じられたりするところにあります。
また一人一人体験も状況も違うので、分類されたものから自分に当てはまるものを探すのではなく、共感したり驚いたりしながらその世界を知っていくという、専門書とは情報との距離感が違うところが面白いなと思います。
当事者が発信するからこそ勇気づけられたり、その世界を初めて知る人に声が届いたりすることは多いんじゃないかな。
感覚過敏、感覚鈍麻のこと、この本で多くの人に知ってもらいたいと思います。